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白銀と亀な使い魔-1 亀と白銀な使い魔-1 白銀と亀な使い魔-2 亀と白銀な使い魔-2 白銀と亀な使い魔-3 亀と白銀な使い魔-3 白銀と亀な使い魔-4 亀と白銀な使い魔-4 白銀と亀な使い魔-5 白銀と亀な使い魔-6 白銀と亀な使い魔-7 白銀と亀な使い魔-8 白銀と亀な使い魔-9 白銀と亀な使い魔-10 白銀と亀の使い魔-11 白銀と亀の使い魔-12 白銀と亀の使い魔-13 白銀と亀の使い魔-14 白銀と亀の使い魔-15 白銀と亀の使い魔-16 白銀と亀の使い魔-17 白銀と亀の使い魔-18 白銀と亀の使い魔-19 白銀と亀の使い魔-20 白銀と亀の使い魔-21 白銀と亀な使い魔外伝 『亀ナレフは平凡無事に憧れる』 亀ナレフは平凡無事に憧れる-1
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ゼロの茨 1本目 ゼロの茨 2本目 ゼロの茨 3本目 ゼロの茨 4本目 ゼロの茨 5本目
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中庭には眼鏡とキュルケがいた。勉強会でもしていたのか、眼鏡は本とノートを持っている。 「ちょっとルイズ。あなた使い魔に逃げられたらしいわね」 うわ……もう広まってるじゃないの。わたしをここから追い出そうっていう闇の勢力でもいるわけ? 「キーシュの使い魔は大活躍だったって聞いたけど。同じ平民でも随分違うものねぇ」 何よ、あんな爺さんがいいの? 見境なし! 淫乱! 色魔! 肉欲の権化! 「コントラクト・サーヴァントまでしておいて従わせることができないなんて」 あーもうやだやだ。こいつ無視無視。おっぱいおっぱいおっぱい。 「あなたらしいわ。さすがゼロのルイズ」 おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい。 「ねえ、あなたわたしの使い魔見なかった?」 眼鏡は首を横に振った。役に立たないわね。 「そっちのあなたは見なかった?」 「見てはいねェー……だがヨォ、ラッキープレイスはルイズの部屋って感じダぜェ」 おおお、このドラゴン口をきくんだ。主に似て物言いは無礼だけど素直に凄いわ。 「……今のは腹話術」 えええええっ、そ、そっちの方がスゴイッって! ここで腹話術を出すセンスはともかくとして、意外にユーモアあるのね、この眼鏡。 「ルイズ。あなたタバサのドラゴンが見えてるの?」 「見えてるのって……見えるに決まってるじゃない!」 どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんでしょうね、このおっぱい的存在は。 「アンタもスタンド使いになッたンだなァールイズ。ビックリだッツーの」 スゴイわねえ。唇なんて全然動いてないじゃない。この子にこんな芸があったなんて驚き。 ところでスタンド使いって何だろ? 無知を晒すみたいで恥ずかしいから聞かないけど。 あとでグェスにでも聞いてやるか。あいつ下らないこと詳しそうだし。 「いつまでそこにいるつもりだ?」 少女は伏せていた顔を上げた。話しかけられていたのかと思ったが、そうではないらしい。 普段の口調には、静かに抑えられた蔑みと上っ面以下の敬意が込められていた。 今の言葉からは、ある種の親しみが感じられた。同族への友好的感情といってもいい。けして少女には向けられることの無いものだ。 自分達以外の誰かがいる恐怖、唐突に動いた使い魔への困惑、場違いな嫉妬、それらが混化し、本人さえ理解しがたいものになり、少女は使い魔を見た。 使い魔の目は少女から逸れ、部屋の端へ向けられていた。何も無いはずの空間を凝視していた。 部屋の中には少女と使い魔しかいない。いくつかのパーツに分かれた使い魔が部屋のあちこちで蠢いている。 「顔くらい見せてもいいじゃあないか」 使い魔の口は動いていない。だが、声は聞こえる。 使い魔の声質に似ていたが、決定的に違う部分があった。 その声は空気を震わせることなく、頭の中へ直接割り込んでくる。 「私は君に従おう。君の目的は知らないが、なんとなく想像はつく。協力させてほしいだ」 口をきいているのは使い魔ではなかった。 少女はベッドから半身を起こし、悲鳴を飲み込んだ。右手で左腕を強く掴んだ。爪が食い込み、血が滲むほど力を入れた。 「主は君だ。私は従で充分だ」 使い魔の傍らに緑色の「何か」がいた。人ではない。人の形に似ていたが、絶対に人ではない。 下半身は醜く潰れ、肩や頭部からは無数の管が突き出ていた。 人形の全身にこびりついた緑色のカビが、少女の使い魔と関係があることを証明している。 目は二つあるが、人間の黒目にあたる部分は存在しない。全体が大雑把でいびつな造りをしていた。 「私には過程があればそれでいいんだ」 幻覚を見せられているのだろうか。握り締めた左腕が悲鳴を上げていたが、少女の耳には「何か」の声しか聞こえていない。 「君と戦おうとは思わん。それだけは分かってほしい」 緑色が薄れ、その声が遠くなっていく。少女はベッドから立ち上がった。この部屋にいたくない。 もつれる足で扉へ向かい、ノブに手をかけた。回そうとするが、汗で滑って上手く回せない。 「……お夜食、もらってくる……ね」 聞かれてもいない言い訳を口にした。 貴族嫌いの料理長に頭を下げるのも毎夜のことで、いまさら言葉にするようなことではなかったが、この異常な状況下、言い訳の一つも無しに部屋を出れば何をされるか分からない。 なんとかノブを捻り、扉を開け、外へ出ようとしたところで足を止めた。 少女の意思で止めたわけではない。足首に纏わりつく使い魔の指先を感じ、少女は足以外の動きも止めた。痛いほどに鼓動を速める心臓だけが、例外的に動き続けている。 「スカラファッジョ、あなた見えていましたね?」 千切れた左腕、ねじくれた右腕、胴体から生えた脊椎のような触手、どんなに気持ちが悪くとも払いのけることは許されない。 「ふむ……ふむ、ふむ」 右手で鼻をつままれ、左手に顎を押さえられた。口をこじ開けられ、使い魔が鼻を差し込んで匂いを嗅いでいる。 足が服の内側で這い回っている。そこに劣情は全く感じられず、それゆえ尚の事恐ろしい。 眼窩に指が差し込まれた。蚯蚓じみた長い中指が深く潜り、眼球の裏を撫でた。 震える足を気力で支え、倒れはしないように耐えていたが、使い魔の傍らに緑色の人形が現れた時点で少女の膝は恐怖に屈した。 緑色が腕を振り上げた。親指を内に握りこみ、それ以外の指は伸びた状態で揃えられている。 何をしようとしているのか理解したが、目を逸らすことはおろか、瞬き一つできない。 振り上げられた手が、何のてらいも無く、振り下ろされた。 見開かれた瞳から涙が一滴、それに合わせ、閉じることを忘れた口の端から唾液が糸を引いて床に落ちた。 「……違うな」 手刀が頭を割る直前で人形は消え失せた。だが、少女はへたり込んだまま動かない。 光彩を淀ませた瞳からは次々に涙が零れ落ち、口元は震えるだけで開くことも閉じることもない。 使い魔は少女に興味を失くしたのか、全ての体を元いた位置に戻し、活動を再開した。 ――スタンド使いを召喚した者にもスタンドが見えるのか? スタンド使い使い……ふん。 ――スカラファッジョか。たしか意味は……へっ、いい趣味してやがる。 どれほどだいそれた力を持っているとしても、種が割れていれば恐ろしくはない。 一瞬で壊れた物体を直そうが、光速を超えて時間を止めようが、いくらでもやりようはある。 策を練ることはけして不得意ではなかった。むしろ得意だった。 自分をより強い快楽へと導くための作戦を立てるため、じっくりと事を煮詰めるその時間は、時として実行時の愉悦を上回る。 だがそれも相手を理解していてこそだ。 仕事が終わってからの一杯をかかさない。 髪の毛をけなされればブチ切れる。 毎朝牛乳を飲んでいる。 母親が美人。 些細な情報でもかまわない。蟻の穴がきっかけで堤防が決壊することは珍しくない。 ――だが、野郎は……。 能力を尻毛の先ほども見せない。大切な物が分からない。主を人質にとも考えたが、現状を見る限り喜ばせるだけだろう。 水蒸気になって忍び寄る。雨に紛れて寝込みを襲う。闇雲に行動を起こすのは簡単だ。 だが相手の能力がこちらの意図を上回るものだったとしたら? 人間でないことは見た目で丸分かり。そんなわけの分からない生き物の体内に入っていいものなのか? 全て罠だったらどうする? 液体にさえダメージを与えるような力があったら? 何かに閉じ込める、全てを凍りつかせる、そんな能力だったら? すでに本体を認識されていたら? そのいずれか一つだけで全てが終わる。 ――しかも、このオレに気づいてやがった。 その上で気づいていることを教え、さらに余裕を崩さずこちらに呼びかけた。自分のスタンドを曝け出し、全てを明かしているポーズをとって話しかけてきた。 その態度、そして泡を食って逃げ出した自分自身に腹が立って仕方ない。 ――ケツ穴がいい気になりやがってるな。オレの前で調子に乗ってやがるな。 いい気になっているやつを許す趣味は無い。例外なく後悔させる。 近寄らずに消す手段は一つだけあった。そして、その手段はもうすぐこの学院へやってくる。 ――クヒヒッ、ヘハハハッ、フウウッヘヘヘヘ……ああ楽しみだァ。思うだけでも気分が晴れるぜェェェェ。 自分の強みは「情報」にある。下水の中、天井裏、排水溝、人が嫌がるあらゆる場所を這い回り、この学院を知ろうと努めた。 結果、表から裏までの全てが自分の中にある。部屋の中で本の表紙を眺めているだけの使い魔には手に入れられない情報を持っている。 食堂で大暴れした爺使い魔、ルイズの下着のローテーション、飽く事の無いキュルケの情事、ロングビルの裏仕事。 近いうちに開催されるであろう使い魔大品評会。 使い魔大品評会。 ――それまでは我慢してやるぜ。オレの性にゃ合わねェがよォ。 使い魔品評会は実にいい機会だ。実戦に近い模擬戦には事故がつき物。そうとくればやることは一つしかない。 一つ一つの挙措に隙が無いハゲ教師。裏で汚れ仕事をしているらしいチビ眼鏡。おかしな力でメイジを一蹴した糞爺。世界有数のメイジと噂される学院長。あとは自分以外のスタンド使いとその主人。 緑色を消し、これらの邪魔者もいなくなれば、この学院は自分の天下になる。 ここは一年ごとに新しい子供が自動供給される天国のような場所だ。誰にも譲ることはできない。 犯してやろう。切り取ってやろう。抉り出してやろう。打ち付けてやろう。ぶちまけてやろう。 中から苦痛と快楽を繰り返し与えてやろう。親友同士で楽しませてやろう。 魔法を使うのもいい。小利口な貴族連中では思いもつかないやり方を考えてやろう。 全ては使い魔大品評会だ。そこから始まる。そこから始める。 別にタバサの使い魔信じたわけじゃないけど……あ、あれ腹話術だったっけ。 別にタバサの言うこと信じたわけじゃないけど、自分の部屋に戻ってみることにした。 わたしはわたしなりに反省したけど、グェスだって反省しかもしれないしね。 部屋の中で正座して待ってるかもしれない。 ここまでポジティブに考えてるのに、渡り廊下でマリコルヌに遭遇するし。またよりによって。 ううう、普段人通りが無いところを選んで歩いてきたのに。 「……」 ん? からかわれることを覚悟してたのに、マリコルヌは元気なさげ。 いつもゼロゼロゼロしか言わない風邪ッぴきがおかしいわね。 どうしたんだろ。食堂の騒ぎが伝わってないのかな。だったらラッキー。 「どうしたのマリコルヌ。元気無いわね」 「いや……別に」 「わたしの使い魔見なかった?」 「……別に」 わたしに目を合わせず、腕にひっついた使い魔の蛙をジッと見ている。 これは怪しい。何か企んでいるようね。 どうやってわたしを陥れてやろうか、そんな雰囲気が漂ってるわ。 ふん、そっちがその気ならわたしだって受けてたってやるんだから。 「あのね。病気じゃないならもっと胸を張りなさい。人をからかってばかりいる不遜なあんたはどうしたの」 バァーンっと背中叩いてやった。マリコルヌはむせてるけど、わたしはちょっとだけスッとした。 マリコルヌは放って渡り廊下を後にする。あーあ、こんなことでしか憂さを晴らせない自分が情けない。 今のわたしって、この学院で一番不幸な女の子なんじゃないかしら。
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「事故死?」 「そ。詳細は分からないけどそのスジの情報だから確かよ。おかげで今朝から『家に戻れ』って家族が うるさくて大変だわ」 「なんで王子の事故死とあんたの帰郷が関係あるのよ」 「はぁ・・・これだからゼロは・・・いいこと? おそらく今回の件で確実にアルビオンは負けるわ。 自分たちの頭か死んじゃったんだから」 「そりゃそうよね・・・ゼロっていうな」 「そうなれば次連中と戦うことになるのはどこ?」 「あ・・・」 そうだ。恐らくアルビオンのクーデターが成功すれば次は間違いなくこのトリスティンが狙われる。 間違っても新政府とトリスティンが和平を結ぶなんてことはないだろうし。 「てわけで家族が戦争になる前に戻ってこいってさ。馬鹿馬鹿しい・・・トリスティンが落ちれば次はゲルマニアなのに」 キュルケの家系はそもそも戦好きだがだからと言って旧来の怨敵に手を貸す必要はない。そう考えているようだ。 「そう、じゃ戻るのね。せいせいするわ。あなたの顔見ないで済むと思うと」 「あら、私は寂しいわよ。頭脳がマヌケなあなたを見れなくなると思うとね」 「なんなら今ここで見れなくしてあげましょうか? 永遠に」 「遠慮しとくわ。それに生きてればまた会えるでしょ、戦場でね」 「いいわ。その時はヴァリエールの名の下に叩き潰してあげるわ」 「私もツェルプストーの名誉にかけて燃やし尽くしてあげる」 そう言ってキュルケは立ち去った。恐らくもう会うこともないだろう。 ルイズ夕方までかかって片づけを済ませいざ自分の部屋に帰ろうとしたところ 「ミス・ヴァリエールですね?」 「そうですが、王国騎士の方が何用で?」 「姫がから勅命を受けてまいりました。城までご同行願えますか?」 「姫様が?」 ルイズは城のアンリエッタの部屋に立っていた。 姫と会うのなんて何年ぶりだろうか。しかしなんで急に私なんかを。 そう考えていると、 「・・・・・おっと。どうやら姫様のお客人が見えられたようです。私はこれで」 部屋から枢機卿のマザリーニが退出した。枢機卿はちらりとこっちを見ると何事もなかったように去って行った。 「・・・姫殿下。失礼いたします」 ドアを三回ノックしてルイズがドアを開けると、 「ああルイズ、よく来てくれました。私のことを忘れていたらどうしようかと」 「姫殿下を忘れる人間などこのトリスティンにいるはずがございません」 「もう、ルイズ。そういう形式ばった呼び方はよして頂戴。あなたにまでそういう態度を取られると悲しくなってしまいます」 「・・・わかりました、姫さま。しかし一体どうしたのですが? 私を及びつけになるなんて」 もしかして私に何か任務を? などとルイズが考えてると 「・・・ルイズ!・・・ひっく、私、私は・・・・」 アンリエッタはルイズの肩を掴んで泣き出したのだった。 「ルイズ、あなたは知らないかもしれないけど、私は・・・アンリエッタはウェールズ様を愛しておりました」 「・・・・・・」 知っていました、といおうとしてルイズはやめた。無粋だと感じたからだ。 「昔よくあなたに影武者をしてもらいましたよね。告白するとあの時私はあの方に会いに行っておりました」 「・・・そうでしたか」 「あの方はいつも私の告白をはぐらかしました・・・そうですよね、私とあの方は所詮・・・」 ひっく、うっくと再びアンリエッタは嗚咽を漏らす。 「今日、ウェールズ様が亡くなったと連絡を受けました」 「・・・・・・・・・」 「事故死だそうです。もとよりあの方は国と命を共にするつもりだとは分かっておりました。覚悟もできてました。 ですが・・・やはり事実を受け止めるのは辛い・・・辛いのです」 「姫さま、好きなだけお泣きなさい。今日だけは・・・今だけは始祖ブリミルをお許しになりましょう」 「ルイズ・・・・・・ルイズゥ~~~~~~~」 アンリエッタは子供のように泣きじゃくった。今まで姫と言う立場上泣けなかった分。ただひたすらに。 それこそ涙を流しすぎて眼がベコベコにならないか心配な位に。 それから一時間ほどしただろうか。泣き疲れたアンリエッタをベットに寝かせ、ルイズは部屋を退出した。 「ミス・ヴァリエール殿」 扉の横には枢機卿マザリー二が立っていた。 「城門までお送りいたします」 「そんな、わざわざ枢機卿様が・・・」 「遠慮なさらずに。どうぞ」 しばらく二人で廊下を歩いていると 「ありがとうございます」 「え?」 「殿下がああやって自分を包み隠さずぶつけれるのはあなたぐらいです。ほんとうにありがとうございました」 「いえ、そんな・・・」 「殿下は今朝ウェールズ皇太子の訃報を聞き、大変ショックを受けておられました。 それこそこのまま気が触れてしまわないか不安なくらいに」 「・・・・・・ウェールズ皇太子は本当に事故死なのですか?」 「アルビオンに潜ませている間者からはそう報告を受けておりますしアルビオン王国からも正式に報告を頂きました」 「・・・そうですか」 「しかし・・・いくつか腑に落ちぬ点はございますがな」 「腑に落ちぬ点?」 思わずルイズは聞き返した。マザリーニはしまったという顔をする。 しかしマザリーニはアンリエッタには絶対に言わない、という条件をつけて話を続けた。 「ウェールズ皇太子が発見されたのは深夜、玉座の間だそうです」 「玉座?」 「最初に発見したのは城の侍従。何かが倒れるような大きな音を聞いて玉座に向かったところそこには」 「ウェールズ皇太子が倒れていた・・・と」 「はい・・・もっとも最初はそれがウェールズ皇太子様だとは分からなかったそうです。 なにせ遺体は巨大な岩に押しつぶされもはや原型を留めていなかったそうですから」 想像してルイズは口にすっぱいものが広がる。王族の死に様にしては酷い部類だろう。 「なぜ深夜に皇太子が玉座にいたのか、また彼を押しつぶした岩石はどこか落ちてきたものか当はまだ何も分かっておりません」 「・・・つまり事故死でない可能性もあり得ると?」 「穿った見方をすればそうなりますな。自殺か他殺か・・・どちらにせよトリスティンとしては渡りに船ですが。 姫にはとても言えませんがな」 「渡りに船? どうしてです、アルビオンが滅べば今度はこのトリスティンが」 「アルビオンはもうレコンキスタに降伏いたしました」 「!」 ルイズの目は驚愕で見開かれる。 アルビオンが降伏? こんなに早く? 「自分たちの主人の凄惨な死に様を見てどうやら残った王族や貴族連中は完全に戦意を喪失されたようで。 これも先ほどアルビオン新政府から連絡を受けました」 「それなら尚更危険じゃないですか!」 「それが外交の不思議なところでしてな。皆殺しなら早く済むことも降伏されると面倒になるのですよ」 相手が最後まで降伏しなければ殲滅の後新政府を樹立し外交なり戦争なりへ進めることができる。 しかし降伏された場合樹立と外交、戦争の間に裁判というものが割って入る形になる。 無論人権など無視して皆処刑してしまえば大して変わらないだろうが、そうなれば外交の道はなくなる。 降伏した相手を皆殺しにする連中が和平を申し込んできても信用できるわけがない。 戦争するにも今の状態でトリスティンゲルマニアを敵に回すのが圧倒的不利になる。 結局正式に裁き、他国の信用を得る必要があるのだ。 「っと、つきましたな。・・・くれぐれもさっきの話はご内密に。いやはや、どうにも今回の件腑に落ちぬ件が多すぎて 私もいろいろと鬱憤が溜まっておりましてな。お許しを」 「いえ、枢機卿様。いろいろと貴重なお話をありがとうございます。姫さまのことよろしくお願いします」 「心得ております。ところで・・・」 マザリーニは足元を指差していった。 「それは、あなたの使い魔ですかな」 ルイズの足元にはいつのまにかローリングストーンが転がっていた。 「きゃっ! あんた見ないと思ったら・・・もう帰るんだからじっとしてなさいよ」 「やはり使い魔でしたか」 「申し訳ございません! なにぶん昨日契約したものでまだ躾が済んでおりませんので・・・」 「ふむ・・・」 マザリーニはじろじろと岩を眺める。が、すぐにルイズに向き直った。 「いえいえ、使い魔なら構いませぬ。魔法学園までは馬車を準備してますのでお気をつけて」 ルイズの乗った馬車を見送りながらマザリーニはさっきに岩について考えた。 似てるのだ。今日報告のあったウェールズを押しつぶした岩石と特徴が。 昨日契約したという話だしまぁ偶然だろう。 そう思い城へと戻ろうとしたマザリーニはあることに気づく。 「はて? ルイズ殿は使い魔を馬車に乗せられたのだったか?」 振り向くと岩はどこにもなかった。いつの間に・・・と思ったがマザリーニはそれ以上考えるのをやめた。 ルイズは学園に戻ると礼拝堂に向かった。 せめてウェールズ皇太子に冥福を祈ろうと思ったからだ。 「・・・・・・・・・」 ルイズは手を組み瞑想する。今日はいろいろあった。 しかし・・・ウェールズは本当に事故死なのだろうか? マザリーニの話を聞いたルイズは彼の死に疑問を持った。 ウェールズには彼女も何度かあったことはあるが、彼は貴族の、王族の鏡のような人だった。 決して国民を捨てて死を選ぶような人ではない。 だとすれば・・・やはり。 「・・・・・・・・・彼は運命を受け入れただけです。『死』は彼のすぐ側までやってきていた。 だから彼はその運命を受け入れたのです」 「!!」 誰もいない礼拝堂から声が響く。 いや、いないわけではなかった。暗い礼拝堂の奥に誰かがいた。 「人は運命には逆らえない・・・彼も私も・・・無論君もね」
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春の使い魔召喚。それはトリステイン魔法学院で二年生に進級する為の儀式である。 その使い魔召喚が出来ないと二年生にはなれないのである。 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求めうったえるわ!我が導きに、答えなさい!」 桃色の髪の少女、ルイズは 自らの使い魔を呼び出すために四十三回目のサモン・サーヴァントを唱えた。 そして四十三回目の爆発を起こす。 だが今回は今までの四十二回とは違っていた。 爆発した場所に何かがあったのだ。 ルイズは遂に召喚に成功したのかと思い顔を輝かせた…がそれも長く続かなかった。 そこにいたのは気絶している人間だったのだ。それも着ている服からして魔法を使えない『平民』だろう。 魔法を使えない『平民』は、魔法を使える『メイジ』に逆らえない。魔法はそれほどまでに強力なのだ。 ただの平民を召使にするなら何の問題もなく、雑用等をやらせれば良い。 しかし使い魔とはただの召使ではなくメイジの一生の相棒でもあり、様々な能力を要求される。 普通は動物や幻獣が使い魔となり、人間以上の能力で人間にはできない事をする。 だがメイジと平民ではメイジの方が力が上、そしてメイジにはできない事が出来る者が使い魔としては理想なのだ。 つまり、平民には使い魔にする価値が無いのだ。 それ以前に平民を使い魔にするなんて事は前例すらない。 故にルイズはやり直しを求めた。 「平民を使い魔にするなんて聞いたことありません!やり直しさせてください!」 だがその必死の思いもあっさりと却下される。 「春の使い魔召喚は神聖な儀式です。やり直しは認められません」 「そんな…」 「早くしてください。そろそろ新しい育毛剤が届く頃なので早く試してみたいのです」 つい本音を出してしまう儀式の責任者(ハゲ)。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 そして気絶している男にキスする。 これがコントラクト・サーヴァント。 召喚した使い魔に使い魔のルーンを刻み 主人の都合のいいように記憶までいじってしまう極悪非道な魔法だ。 召喚された男の左手にルーンが刻まれる。 「はい、ルーンが刻まれましたね。じゃあ今日は終了!解散です!」 そう言ってろくに確認することなくトリステイン魔法学院の自分の部屋へさっさと戻っていった。 周りの生徒も平民を召喚したルイズをからかいながら帰っていった。 気絶している男と残されたルイズは何とかその男を寮にある自分の部屋まで運んでいった。 途中、寮の入り口でバッタリ会ったギーシュに部屋まで運んでもらった。 だがギーシュの真の目的は女子寮に正々堂々と入ることだったらしく 運び終えた後、それに気づいたルイズに白い目で見られた。 日が落ち、男がルイズの部屋で目を覚ましたのに気づいたルイズは 「気がついた?」 と声をかけた。 だが男は状況がよく分かっていないらしく(まあ当たり前だが) 「ここは何処なんだ?そしてお前は誰だ?」 と言った。それを聞いたルイズは言葉遣いや『お前』と呼ばれた事に腹を立てながら 自分は魔法を使える貴族で男は自分の使い魔であることを説明した。 男はその話の内容や、ふと目に付いた二つの月からここが異世界である事を理解した。 ちょっと横を向いて歩いていたらいつの間にか目の前に変な鏡があってその中に入ってしまい意識を失った。 そして気がついたら異世界だった。 その事をルイズに話して元の世界に帰る方法を聞いてみても 「そんな方法無いわよ」 と言われただけだった よって男はある『決意』をした。 「どうせアンタは使い魔らしい事は何も出来ないだろうから出来る事をやらせてあげるわ掃除、洗濯、雑用分かった?」 「分かりました。ご主人様」 「いい返事ね。あ、そうそう一応これも聞いとかなきゃね。私に忠誠を誓う?」 「もちろんです」 主人のためならなんでもする。そんな態度だった。 「使い魔なんだしアンタは床で寝なさい、毛布くらいは恵んであげるわ、感謝しなさい」 「ありがとうございます」 ルイズは自分の使い魔の最初の反抗的な態度が無くなり、忠誠を誓った事に気分を良くし、服を着替え眠った。 男には何か策があって床で寝ているのか? なにもない! 見よ! このブザマな主人公の姿を 男は硬くて寝心地の悪い床で粗末な毛布を被っている だが! だからといって男がこの物語の主人公の資格を失いはしない! なぜなら!… 男はルイズが寝たのを確認し、そして部屋を物色して金目の物をいくつか盗みルイズの部屋から抜け出した! まぎれもない主人公!(テーマが主人から逃げる使い魔のため) 主人公の資格を失うとすれば生きる意志を男がなくした時だけなのだ! 部屋を抜け、階段を降り、ホールらしき所に出た。 そこに金髪の男がいた。その金髪は男を見つけると 「おや?ミス・ヴァリエール(ルイズの事)の使い魔じゃあないか」 男には知る由も無いが、この貴族こそが男をルイズの部屋まで運んだ貴族、ギーシュ・ド・グラモンだった。 「平民のクセに貴族に挨拶も無しかい?君は知らないだろうけど君を運んだのは僕なんだよ?感謝の言葉がいくらあっても足りないんじゃあ…」 「うおりゃああああ!」 ギーシュの首元にナイフを突き刺す。首を刺されたギーシュはそのまま絶命した。 一応言っておくが男は殺しが好きな訳ではない、ただ目撃された以上消しておかねば後々不利になるからだ。 もっとも魔法で探知されるかもしれない危険性もあったが、そんなあるかどうかも分からない事で躊躇するほど男は殺しが嫌いな訳でもない。 ギーシュをちょっと見つかりそうに無い所まで運び、ナイフを抜いた。傷口にマントを当てて血が床に流れないようにする。 そして寮になっている塔を出て、馬小屋を見つけ、馬に鞍をつけトリステイン魔法学院を脱出した。 その後は特に語るほどの事は無い。数年の旅を経て金鉱を見つけ、男はある財団を結成した。それだけだ。 その名は『スピードワゴン財団』 ギーシュ―死亡 ルイズ―使い魔がいなくなったため退学。後にゲルマニアで金を使い貴族になったスピードワゴンに会うが、覚えていなかった。
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窓から差し込む光でジョニィは目を覚ました。 いつもなら日も昇りきらない早朝に起きてすぐに次のゴールを目指して出発するのだが やはり昨日の一件で肉体的にも精神的にも疲れていたらしい。 目の前にある下着を見て昨日の出来事が夢ではないことを悟った。 ジョニィは昨晩寝る前に「ご主人様を起こすのも使い魔の役目!」と言われてたのを思い出し 上半身を起こして車椅子に乗るとベッドに近づいていく。 自称ご主人様はまだベッドの中で寝息を立てている。 (何で僕が堅い床でルイズがふかふかの布団なんだ…?) 昨日の一件を思い出し少しイラッときたジョニィはルイズが寝入っているのを確認しタスクを発現させる。 「タスク───移動する穴───!!」 ジョニィの爪弾が床に撃ち込まれる。 その弾痕穴はルイズのベットに向かっていき… ガゴンッ! 「キャッ!」 ベッドの足を一本破壊して消えた。 「な、何よ!?なにごと!?」 「朝だ、お嬢様」 「はえ?そ、そう…ってなんであたしのベッドが傾いてるのよ!」 「僕に聞くなよ。ただ地震かなんかで足が折れたんだろ」 まだ寝ぼけたままのルイズは「ああ、そんなものなのかな」と納得してしまう。 一方ジョニィはこっちの世界でもスタンドが発現できるとわかり一安心である。 背中に脊椎部の遺体の一部があることも感覚でわかる。 ルイズは起き上がるとあくびをした。それからジョニィに命じる。 「服」 椅子にかかった制服をルイズに向かって放り投げてやる。 だるそうにネグリジェを脱ぐルイズに背を向ける。 「下着」 「は?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 「………」 なるほど、雑用ね。そう思いながら下着を適当に引っつかんで後ろに放り投げた。 「服」 「君にさっき渡しただろ?僕はもう持っていない」 「着せて」 「僕が?」 「平民のあんたは知らないだろうけど下僕がいるときは自分で服なんて着ないのよ」 「できるわけがないッ!」 いくらなんでも昨日会ったばかりの女の子に服を着せるなんてできるわけがないッ! そう思って振り返ったジョニィは四回言う前に冷静さを取り戻した。 ルイズの体は未発達で出るとこが全然出ていなかったのである。 下着姿のせいで悲しいほどよくわかる。 これだったら年下でもルーシー・スティールのほうがよっぽどスタイルがいいだろう。 それなりに女遊びもしてきたジョニィはルイズの体を見てもどうとも思わず、逆に同情の気持ちがわいてきた。 (最高だったは使えないな…) ジョニィはやれやれといった表情でルイズのブラウスを手に取った。 ルイズと部屋をでると廊下の戸が一つ開き、中から燃えるような赤い髪の女の子が現れた。 身長、肌の色、雰囲気、胸、全てがルイズと対照的な美女だった。 「おはよう、ルイズ。あなたの使い魔ってそれ?」 にやっと笑いながらルイズに挨拶をするとジョニィを指差して今にも噴出しそうな顔で言った。 「そうよ、文句あるのキュルケ」 「あっはっは!ほんとに平民なのね!すごいじゃない!さすがはゼロのルイズ!」 キュルケ、と呼ばれた女の子は腹を抱えて爆笑している。 「あたしも昨日使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って一発で呪文成功よ」 「あっそ」 「どうせ使い魔にするならこういうのがいいわよねぇ~。フレイムー」 キュルケが勝ち誇った声で使い魔を呼ぶと部屋からのっそりと真っ赤で巨大なトカゲが現れた。 ジョニィは思わず車椅子をバックさせる。 「うおおッ!?なんだこいつはッ!?」 「もしかして、あなた、火トカゲを見るのは初めて?」 「…毒とかある?」 「平気よ。それにあたしが命令しない限り襲ったりしないから」 キュルケは手を顎にそえ、色っぽく首を傾げた。 「これってサラマンダー?」 ルイズが悔しそうに尋ねる。 「そうよー。火トカゲよー。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。 ブランドものよー好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」 「そりゃよかったわね」 「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」 キュルケは得意げに胸を張った。ルイズも負けじと胸を張り返すが、まったく勝負になっていない。 ふとキュルケはジョニィを見つめる。 「あなた、お名前は?」 「ジョニィ・ジョースター」 「ジョニィ・ジョースター?ヘンな名前。じゃあ、お先に失礼」 そう言ってキュルケは颯爽と去っていった。 その後をサラマンダーがちょこちょこと追っていく。 「くやしー!なんであのバカ女がサラマンダーでわたしがあんたなのよ!」 隣でルイズが何やらわめきだしたがジョニィはさっきのトカゲのことで頭がいっぱいだった。 どうもあの火トカゲを見ると毒でもあるんじゃあないかと疑ってしまう。 (な、なんで僕はこんなにあのトカゲを警戒しているんだ?) 話を聞いていなかった罰としてルイズに チョップを撃ち込まれた彼の頭には一瞬だけアンドレ・ブンブーンの顔と腫れ上がった指が浮かぶのだった。 To Be Continued =>
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ゼロ#11-A ニコニコ ゼロ#11-B ニコニコ うわぁい、スカロン店長だ! 中途半端のシリアスはこいつの濃さで全部吹っ飛ぶから困る。 店長登場は嬉しいが、平民ビッチの登場はいまいち……。 ただでさえ時間無いのに無駄な要素を出すのは、いかがかと。 つまり、店長=必要、平民ビッチ=不要ってことだ! ついにギーシュ降臨祭。 とは言え、ギーシュの影薄いのも確か。 しかもアイキャッチでずっと引っ張ってきたルイズのエロ猫姿の前では……。 雪の振る中、屋内とは言えその格好は無いだろ……常識的に考えて……(ニヤニヤしつつ やはりギーシュの影が薄いぜー。 もうちょっとサイトとの絡みが欲しいぜー、うほ的なのは抜きにして! サイトが生死について怒る時にモンモンの名前出すぐらいのリップサービスも欲しかったし。 妖精の伏線のこと考えると第三期すら考えてるのだろうか。 あの重要キャラのハゲ死んでしまったのに……。 まぁ多少無理矢理でもハゲが生きてたらそれはそれで嬉しいんだが。 将軍終了のお知らせ。 ビッチ姫は確か水魔法のかなりの使い手じゃなかったか……。 消化してやれよ!と思ったのは僕だけじゃないはずだ。 いきなりの急展開で、いっきにシリアス。 平民ビッチの渡してくれた睡眠薬が毒薬にしか見えないのは僕だけじゃないはずだー! 色々とダメダメだった第二期も来週で最終回。 なんだかんだで最後には期待しちゃってるのも、僕だけじゃないはずだ! 名前 コメント
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「海軍少尉、佐々木武雄、異界ニ眠ル、か」 シエスタにひい祖父の墓の前に案内されたシュトロハイムが呟く。 「え、シュトロハイムさん、これ読めるのですか!?」 「腐っても大佐だ、ドイツ語はもちろん英語フランス語デンマーク語イタリア語日本語などお茶の子よッ!」 「よくわかんないけどすごいわねー」 キュルケがパチパチと手を叩く。 「へえ、平民で大佐とはすごいな、僕の家も長く武家をやってるが、平民で佐官まで上り詰めた人間なんて そう聞いてないな。君の国はどこなんだい?」 ギーシュがそう尋ねた。 「う、うむ…ま、まあその話はオスマンにでも聞いてくれ…」 すると途端にシュトロハイムの歯切れが悪くなる。 「なによー、別にいいじゃない、言っちゃいなさいよ」 キュルケが促す。 シュトロハイムは特徴的な髪を片手でいじりながらゴホン、と咳をしてから話した。 「うむ、それなんだが…信じてもらえないかもしれないが、違う世界から来たのだ」 「違う世界ですって?そういえば私の使い魔もチキュウというところから来たって言っていたわね」 シュトロハイムがものすごい形相でルイズに振り向いた。 「なんだと、そう、俺もその地球から来たのだ!うむ、一度あってみたいな、その使い魔とやらに!」 「まあ、そのうち会えると思うわ」 「うむ、楽しみにしているぞ!」 シュトロハイムが大きく頷く 「あまり過度な期待はしないほうがいいと思うけれどね」 「よし、これで遺言通り墓碑銘も読んで機体も頂けた、あとはガソリンを入れるだけだぞ、コルベール!」 「うむ、ぜひともあれを飛ばしてみたいですぞ!」 シエスタがにっこりと笑う。 「わたしも、ぜひともあれが飛んでいるところをみたいですね」 「うむ、では初飛行と行こうか、空の羽衣、いや零式艦上戦闘機五二型のな!」 「ふむ…よい整備状況だが、少々無線とかををいじらねばな」 シエスタに空の羽衣の場所まで案内されたシュトロハイムは、周りを調べながら呟いた。 「ほう、無線とはなんですかな?」 コルベールが興味津々で尋ねる。 「まあ待て、コルベール、俺の胴体を一旦解体してくれ…うむ、そうだ、そしてそこの四角い物を 取り出して…ああ!コルベール、もっとやさしく!そこはダメだッ!ダメッ!ダメッ! そう、そうしてそれを取り出したら、横の……」 作業が終わるのを暇そうに一行は眺める。 「それにしてもここは眺めのいいところねー」 キュルケが大きく体を伸ばす。 「ええ、わたしもこの景色、大好きですよ…田舎ですけれどもね」 シエスタがはにかむ。 「ああ、そうでした、ここのワインは景色とならんで自慢なんですよ! 後で振る舞いますのでぜひどうぞ、シュトロハイムさんたちもどうですか?」 しかし、彼らは集中しきって聞いていない。 いつのまにかギーシュも見慣れない部品でできたシュトロハイムの体に興味津々だ。 「まったく、これだから男の子ってのはねえ…」 キュルケがなにかを悟ったように呟いた。 「うむ、これで完成だ!では飛ばすぞ!…しかし、戦闘機に乗るなど久しぶりだな、 ルフトバッフェから降ろされたのがこの体になってからの唯一の心残りだったが、それも晴れた」 エンジンが音を立てて震えだし、シュトロハイムはゼロ戦に乗り込む。 「滑走距離よし、離陸する!」 長い長い草原の上を地平線めがけて車輪が回り、機体が進み始める。 かなり長い距離を進んでいき、そして、ゼロ戦は唐突に車輪が地面から離れた。 ゼロ戦は浮き上がり、そして大空へ舞い上がった。 近くの住民たちが歓声を上げる。コルベールの歓声は一際大きかった。 「天気晴朗な…ど波高し…どう…聞こえ…か?」 空にいるはずのシュトロハイムの声が後ろから聞こえ、驚いてルイズ達は振り向く。 「ど、どこにいるのシュトロハイム!?」 「コルベ…ル…渡した機械に向か…て声を吹き込んでくれ」 コルベールはハッとして四角い箱につながれた小さな箱を拾う。 「こ、これはなんですかシュトロハイムくん!?」 「うむ…よく聞こえるぞ、コルベール、これは無線とい…てな…ある程度離れてもこうやって 会話をすることができるのだ、動力は先ほど俺から取り出したバッテリーで動いているウウウウッ! ゼロ戦にももちろん積んであったが、我がナチスの電撃戦のカギは密接な連絡と指揮ィイイイイッ! 文字通りの機械化歩兵である俺に無線を積んでいないわけがないィイイイイイイッ!」 コルベールは興奮した顔で声を吹き込む。 「すごいですな、シュトロハイムくんの世界は!死ぬ前にお目にかかりたいものです!」 シュトロハイムの笑い声が聞こえた。 「あまりガソリンの無駄遣いはできんからな、そろそろ着陸する…全員機械を抱えて森の方まで避難してくれ」 シュトロハイムの乗ったゼロ戦は空中で華麗に旋回し、地面に車輪をつけ、数百メイル進んだのちに止まり、 中からシュトロハイムが降りてきた。 「どうだった、コルベール?」 「素晴らしいですな!あれにエンジンが使われているというのは驚きですな! 発明家としての血が沸きますぞ!」 「うむ、ではそのうちにこれを魔法学院に持っていく、着陸できそうな所を見繕っておいてくれ、 ではここの名物のワインを頂こうとするか!」 「なによ、あんたちゃっかり聞いてたのね」 キュルケがシュトロハイムをつつく。 「ワインとチーズには目がなくてな、あとはザワークラウトでもあれば言うことなしだな、 うむ、あちらの世界でちゃんと料理を学んでおけばよかった」 シュトロハイムが唸る。 シエスタの家に向かうと、近くの住民たちが集まって大がかりな歓迎会を開いていた。 この村の宝である『空の羽衣』が本当に飛んだのをみて急遽用意した、とのことだった。 村長が泣きながら現れ、コルベールとシュトロハイムに頭を下げ、シュトロハイムに抱きついた。 コルベールに抱きつくのは彼が貴族のため自粛したようだったが。 「素晴らしいワインですな、これは!」 コルベールが感嘆する。 「貴族様にそう言っていただけると光栄です」 そう言った住民にシュトロハイムが首を伸ばして酔った顔で言う。 「おい、そいつはお前が思ってるような貴族じゃないぞ、土と油にまみれた高貴さなんてかけらもない奴だ! そんな奴に敬語なんて使ってもなにもでんぞ、わははははは!」 といって豪快に笑う。 「そ、そんな、畏れ多いですよ…」 「ははは、いいんだよ、一応教師をやっているがこうやって休暇をとって好き勝手やっているんだからね! しかも、生徒たちにこんなところで好き勝手やっていることがバレてしまったし、面目が立たないですな! しかし、それでもこのワインとチーズを楽しめただけでもあの『空の羽衣』を研究した甲斐はありましたぞ!」 「ありがとうございます、コルベール様、それでは次のワインを持ってきますね」 コルベールは頬をかく。 「うむ、なんだか催促したみたいになってしまいましたな…」 生徒たちも思い思いに楽しんでいた。 「UMEEEEEEEEEE!」 「このチーズがワインを、ワインがチーズを引き立てるッ!『ハーモニー』っていうのかしら、 『味の調和』っていうのかしら!例えるならホワイトスネイクとルイズ! 神田に対する栗原!ベルリンフィルハーモニーに対するサイモン!って感じだわ!」 「ところでコルク抜きもってないかしらあ?」 ギーシュ、ルイズ、キュルケも酔っぱらい、 いつのまにかシエスタも飲み始めていた。 「るいずさーん、一発芸やりますねー、口にワインを含んでー、パウパウッ!波紋カッター!」 「すごいわねーシエスタ、それどこで習ったのー?」 「えへへー、曾祖母のリサリサっていう異世界からきたひとからー、あれれー?私の曾祖母は 普通の人ですよねー?えへへーやっぱりわかんないですー」 あまりに酔いすぎているため、これは帰らせるのは無理だと判断したコルベールは泊まっている シュトロハイムの小屋の近くにある宿に放り込んだ。 「あー、頭痛いわ…」 そう言って一階にルイズは降りていく。 ワムウに起こされているせいか、早起きはどうやら得意になったようである。 降りていくと、コーヒーを飲んでいるシュトロハイムがいた。 「ほお、なかなか早いな。あの少年よりは軍人向きかもしれんぞ?」 「あなたは元気ね、シュトロハイムさん。私たちは全員二日酔いで唸ってるわよ」 「軍人だからな、鍛え方が違う。敵は常にウォッカ飲んでるような奴らだったしなおさらだ」 「…ねえ、シュトロハイムさん、異世界から来たって言ったけれど…元の世界は恋しくないの?」 シュトロハイムは頬を緩ませる。 「貴女は優しいな、恋しいこともある。あの風土、食品を味わえんと思うとな」 「家族とか友人は恋しくならないの?」 「父母はいるが、まあなんとかやっていけるだろう。弟は先に戦争で死んだ。友人も、部下も、 優しい上官も厳しい上官も多く死んだ。俺が死なせたものも多くいる。俺がいなくなった戦場はどうなっているか 気がかりであるが…大佐一人で歴史はかわらんさ、閣下のように伍長から政治畑に上っていく器でもない。 なるべくようになるはずだろうな」 ルイズは黙りこくる。 「地球が恋しいこともある。しかし、俺があちらで死んだ以上、あちらでの俺の人生は終わったのだ。 ここはよいところだぞ、ミス・ヴァリエール。俺には帰るべき故郷はない。 ここに骨をうずめられるならば二度目の人生としては上々だろう」 「そうやって諦めきれるものなの…?」 「そうでも思わんとやっていけん」 そう言ってシュトロハイムはコーヒーをぐいっと飲み干した。 「あっちの世界の知識のある俺なら微力ながらやれることくらいはあるだろう。悲惨な戦争を止めるほどの力はないが、 少なくともゼロ戦を飛ばすことくらいはできる。ここの人たちに笑って貰えたのだからな、かなり上等じゃないか、 お前らを襲うオーク鬼も片付けられたしな」 そう言い終わったあと、キュルケとギーシュが降りてきた。 「あら、ルイズ早いわね」 「いたたたたた、おはよう、ルイズ、キュルケは大丈夫なのかい?」 「トリステイン人とは酒への強さが違うわ」 「そうかいそうかい、どうせ僕は軟弱な下戸さ」 キュルケたちはルイズの横に座る。 「それで、どうするの今日は?」 「もう宝の地図はないし、帰るしかないじゃない」 「結局徒労だったってことね」 ルイズの言葉にギーシュがムッとしていう。 「待て待て、あのカヌーのようなものが飛ぶところをみれただけでもこの旅は素晴らしいものだったぞ!」 「学院にいてもシュトロハイムさんがくるとき見れるじゃない」 「う、まあそうだが」 「まあ、ここでグダグダ言っててもしょうがないわよ、帰る準備でもしましょう」 そういってキュルケが立ち上がったとき、轟音が響いた。 「やれやれ、壊滅的とはこのことを言うのだな」 アルビオン艦隊にいわば『騙し討ち』といった形で攻撃されたトリステイン艦隊・ランベルト号艦長は自嘲的に言った。 「白旗をあげている艦も多くおりますな、罵ってやりたいところだが、そうもいきませんな」 側近の部下が艦長にそう漏らす。 「それで、どういたします、艦長?」 「そんなもの決まっておるだろう」 艦長は杖を構えた。 「勝ったつもりでいる奴らを教育してやる他あるまい、なに、運がよければ痛みもなく死ねるだろうからな」 「あなたも馬鹿ですな、貴族であるあなたは捕虜になるのが関の山でしょう」 「そう言うな、馬鹿な参謀め、『ランベルト』号、八時の方向に砲撃開始!一秒でも長くトリステインの空を守るぞ!」 「どうなっているのです、マザリーニ」 「アルビオン軍はタルブの村に上陸作戦を始めたようですな、もう少し言えば、ゲルマニアの助けは 得られそうもありません…さて、どうするのです?姫殿下?」 「不可侵条約があったはずでは?」 「紙のように破られたようですな」 「マザリーニはどうすべきだと思いますか?」 「タルブを捨てるべきか、水際作戦を行なうか、どちらを姫殿下が選ぶかによりますな」 「捨てられるわけがないでしょう」 「ならば、言わずもがなです」 「わかりました。南方の竜騎士部隊を急行させます。行きますよ、マザリーニ!」 「お姉様、タルブの村がなにかおかしなことになってるのね」 「降りる」 「わかったのね、ワムウ様、しっかりつかまってるのね、きゅいきゅいー!」 To Be Continued...
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3話 朝である。 窓から差し込む光の量でそれを察知したホワイトスネイクは自分自身を「発動」させた。 言い換えれば「起きた」ということだ。 本来ならスタンド使いがスタンド使いの意思で発動させるものなのだが、 本体の役割を果たすルイズと視覚聴覚の共有はおろかダメージの共有さえ無いという状況である。 スタンド能力に関するあれこれは全てホワイトスネイクに一任されているようだ。 そしてホワイトスネイクは自分のご主人様(ルイズ曰く)たるルイズを見る。 ルイズは実にあどけない面で寝ていた。 「わたしのぉ~、ひっさつまほうで~ぇ・・・」 しかもよく分からない夢を堪能しているようだ。 とりあえず朝だから起こすべきだろう、と考えたホワイトスネイクは、 ぐっすり寝ているルイズの毛布を遠慮のカケラも無くばさりと剥いだ。 「な、なによ! なにごと!」 「朝ダ」 「はえ? そ、そう……って、ひゃあっ! だ、誰よあんた!」 寝ぼけた声で怒鳴るルイズ。 まだ夢から覚めきっていないらしい。 ホワイトスネイクはため息混じりに、 「『ホワイトスネイク』ダ、オ嬢サン」 「ああ……わたしの使い魔の、ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」 ルイズは起き上がるとあくびをして、う~んと伸びをすると、 「ってちょっと待ちなさい! あんた、一体どこから入ってきたの!? 昨日確か締め出したはずよ!」 「私ニトッテ物理的ナ障害ハ意味ヲ成サナイ。壁ヤドアヲスリ抜ケルグライ、簡単ナモノダ」 「ウソ……あんた、何者なの? 幽霊?」 「幽霊、カ。ソレガ一番近イカモシレナイナ 背後霊ト言イ換エテモイイ」 背後霊、という言葉にルイズが少し青ざめる。 本当に、こいつは一体何なのだろうか。 昨日は蹴っ飛ばすことができたから実体はある。 人間みたいに話すことも出来る。 昨日脚を触られたときには体温みたいなものも感じた。 でも……壁をすり抜けたりもできる。 空を飛んだりもしていた。 一体、こいつは何なんだろう。 得体の知れないホワイトスネイクに、ルイズはちょっぴり気味の悪いものを感じた。 とそのとき、ルイズはふとあることを思い出した。 「洗濯は? あんたにやらせるつもりで忘れないようにするために書き置きしといたんだけど……」 「昨日ノ晩ノウチニ済マセタ」 へえ、中々優秀じゃない、と気をよくしたルイズ。 さしずめ「使い魔がしっかり言うことを聞くのがとても気分がいいッ!」と言ったところか。 もっとも、ホワイトスネイクがお隣の赤毛の女にその洗濯をやらせていた事実などルイズには知りようも無い。 そして気をよくしたところでルイズは、 「服」 と、ホワイトスネイクに命じた。 つまり服を取って来いということである。 ホワイトスネイクはふわりと空を蹴って移動し、椅子にかかった制服を掴むと、 またふわりと空中を移動して未だベッドの上にいるルイズに戻ってきた。 ルイズはだるそうに着ていたネグリジェを脱ぎ始める。 下着は昨日の晩に脱ぎ捨てたので、ネグリジェが無くなったらルイズは文字通りの全裸である。 健全な男の子が見たら鼻血を出すこと請け合いの光景だったが、ホワイトスネイクはそれを興味なさそうに見ていた。 「下着とって」 「ドコニアルンダ?」 「そこのクローゼットの一番下の引き出し」 またホワイトスネイクは空中を移動して音も無くクローゼットの前に着地する。 そしてクローゼットを開け、適当にその中から下着を選び出すと、 それを持ってまたルイズのところに戻ってきた。 ルイズはホワイトスネイクから受け取った下着を身に着けると、 「服」 「着セロ、トイウコトカ?」 「そうよ」 こんな使い方をされるのは本当に不本意だ、とホワイトスネイクは思った。 どうせなら戦いとか、記憶を奪うとか、そういうことに使って欲しい。 こんな仕事ならヨーヨーマッでも出来るんだから。 だが心の中で愚痴っていても仕方がないので、仕方なくルイズに服を着せる作業をした。 もちろん、その不満を表に表すようなことはしない。 こうして着替えを終えたルイズとホワイトスネイクが部屋から出ようとしたところ、 「あ、あとわたしのことを『お嬢さん』って呼ぶのはやめなさい。 なんだか見下されてるような感じがしてイヤなのよ。 それにあたしにはルイズって名前があるんだから。」 「デハ、『ルイズ』ト呼ベバイイノカ?」 「ダメよ、ご主人様に向かって呼び捨てなんて」 「ソウカ。ナラ……『マスター』トデモ?」 「マスター……か。うん、それでいいわ」 こうしてルイズは、ホワイトスネイクから「マスター」と呼ばれることになった。 さて、部屋から出たルイズとホワイトスネイク。 いざ食堂へ――向かおうとしたところ、廊下に3つ並んだドアのうちの一つが開いた。 そこから出てきたのは、ホワイトスネイクが昨日洗濯関係で世話になった赤毛の女だった。 女の背はルイズより高く、むせるような色気を放っている。 そして顔の彫りは深く、突き出たバストがなまめかしい。 しかもブラウスのボタンを2番目まで開けているので谷間が丸見えである。 そして昨日は夜だったこともあってホワイトスネイクは気づかなかったが、女の肌は褐色だった。 女はルイズのほうを見ると、にやっと笑って、 「おはよう、ルイズ」 と挨拶した。 それに対してルイズはあからさまに嫌そうな顔をして、 「おはよう、キュルケ」 と返した。 「あなたの使い魔って、それ?」 キュルケはホワイトスネイクを指差して言う。 「そうよ」 そうルイズが返すと、キュルケは値踏みするようにホワイトスネイクをじろじろ見て、 「ふ~ん……本当に亜人なのね。 それに、昨日は杖も詠唱も無しで空を飛べてたみたいだし。 エルフの親戚なのかしら。 ま、『ゼロ』のルイズにしては、上出来じゃないの?」 一応褒めてはいるようだが、それでもかなり見下した口調でそう言った。 「ふーんだ。いいのよ、成功したんだから。それに、そう言うあんたの使い魔は何なのよ?」 「あ~ら、見たいの? 言われなくたって見せてあげるつもりだったけど……フレイム~」 キュルケが自分の使い魔の名前を呼ぶ。 すると彼女の部屋から、のっそりと、真っ赤で馬鹿でかいトカゲが現れた。 いうまでも無く昨日ホワイトスネイクがDISCをぶっ刺したトカゲである。 そしてルイズの部屋の前の廊下がむんとした熱気に包まれる。 「熱ヲ放ッテイルノカ? コノスタンドハ」 「そりゃそうよ。だってフレイムはサラマンダーなんだもの。 …っていうか、『スタンド』って何よ?」 「イヤ、ナンデモ無イ」 (テッキリスタンドノヴィジョンデハ、ト思ッタガ…ソウイウ生キ物ナノカ。 私ハトンデモナイ所ヘ来テシマッタノカモシレンナ) 昨日の推測が誤りであったことを理解すると同時に、 この世界のブッ飛び具合を改めて理解したホワイトスネイクであった 「それにフレイムはただのサラマンダーじゃないわ。 見てよ、この尻尾! ここまで大きくて鮮やかな炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? ブランド物よぉー? 好事家に見せたら、きっと値段なんかつかないわ!」 「そう、それはよかったわね」 得意げに胸を張るキュルケに対し、ルイズも負けじと胸を張り返すべく―― 「ホワイトスネイク、あんた何が出来るのよ?」 「何ガ出来ルカ……カ」 ホワイトスネイクは考えた。 昨日は誰も見ていないからこそ堂々と能力を行使したが、今は目の前に赤毛の女がいる。 ルイズに見られるのはいいとして……この女に手の内を晒していいものだろうか? そんなことを考えた結果―― 「別ニ大シタコトガ出来ルワケデハナイ」 あえてウソをついた。 「セイゼイ出来ルノハ、空中ヲ飛ブヨウニ移動シタリスルグライナモノダ」 「なあんだ、じゃあ見かけ倒しって事じゃない。 やっぱりあなたにお似合いの使い魔だったわね、ルイズ」 「う、うるさいわよ!」 ムキになって言い返すルイズ。 だがキュルケは余裕の表情でそれを見下ろして、 「じゃあ、お先に失礼」 そう言うとフレイムを従えてさっさと行ってしまった。 「くやしー! なんなのよあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚できたからってエラソーに!」 「ソノ『火竜山脈のサラマンダー』トヤラガ召喚デキルト何カイイ事デモアルノカ?」 「大有りよ! 使い魔は主人の実力を示すものなの。 だから火竜山脈のサラマンダーを召喚できたキュルケにはそれだけの実力が……ってああもう! 考えるだけで腹が立ってくるわ!」 「『使い魔は主人の実力を示す』……カ。ナラ君ノ実力モ捨テタモノデハナイナ」 「どういうことよ!」 ホワイトスネイクの言葉の意味が分からなかったルイズはすぐに聞き返す。 すると、 「私ハ少ナクトモアノ化ケ物トカゲヨリハ強イ」 「…ウソでしょ?」 「本当ダ。機会ガアレバ実力ノ一ツデモ見セテヤル」 「でもあんた、さっき『特別な事は何も出来ない』とか言ってたじゃない」 「アレハ方便ダ」 「方便?」 「私ハサッキ、自分ノ能力ヲ明カサナイタメニ『アエテ』ウソヲツイタ。 ……アノ女相手ニワザワザ手ノ内ヲ明カス必要ハ無イカラナ」 余裕のある口ぶりで言うホワイトスネイク。 だが昨日召喚したばかりの使い魔にいきなりそんな事を言われても、ルイズには信じられるわけが無い。 でも、そういえば今朝扉をすり抜けた事はキュルケには言わなかったし……。 本当のところはどうなのだろうか、と悩んだルイズは、 「じゃあ教えてよ。あんたが一体、何が出来るのか」 と聞いた。 実にストレートである。 そしてそれを聞いたホワイトスネイクはニヤリと笑うと、 「一ツハ命令スルコト。 一ツハ幻ヲ見セルコト。 そして一ツハ――」 「記憶ヲ奪ウコトダ」 「……どういうことよ? 分かるように説明しなさい」 残念ながら我らがご主人様には理解されなかった。 むしろ混乱しているようである。 ホワイトスネイクはそんな自分の主人を見て、 「分カラナイノナラ……実際ニ私ガ使ウ所ヲ見ルトイイ。近イウチニ3ツ見セヨウ」 そういって、自分を『解除』した。 とは言ってもルイズにとっては初めてみる光景だったので、 ホワイトスネイクが煙のように消えてしまったことにかなり焦った。 「え? ち、ちょっと……え? 消えちゃったの? ……え? どういうこと?」 「落チ着ケ、マスター」 そう言って首から上だけで現れるホワイトスネイク。 ホワイトスネイクからすれば全身を出すのが面倒くさかったからこそなのだが―― 「っっっっっっっ!!!!!!!!」 自分の使い魔がいきなり生首になって現れる光景は、 年頃の少女には、ショッキングすぎた。 そして朝食の席にルイズとホワイトスネイクが到着したとき―― ルイズの両目はほんのちょっぴり涙で潤んでおり、 ホワイトスネイクは全身からプスプスと黒い煙を上げていた。 例の爆発を食らったためだ。 もちろんコスチュームもボロボロである。 「……いいこと。今度ご主人様を怖がらせるようなことしたら、またオシオキだからね」 「……了解シタ、マスター」 さて、ここ「アルヴィーズの食堂」には、ゆうに100人は食事を取れるであろう程に長い机と、 その上に所狭しと並べられた豪華な料理と豪華な飾り付けがあった。 「中々豪華ナ食卓ダナ」 「トリステイン魔法学校で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 食堂の絢爛っぷりに感心したように言うホワイトスネイクに、ルイズは得意げに指を立てて言った。 「メイジはほぼ全員が貴族なの。 だから私たちが貴族としての教育を受け、貴族としての礼儀作法を学ぶために、 貴族にとって相応しい食卓がこうして用意されてるってわけ。分かった?」 「ナルホドナ。……デ、ソコニ置イテアルノハ何ダ?」 ホワイトスネイクが床を指し示す。 そこには小さな肉の欠片がぽつんと浮かんだ貧しいスープと、あからさまに硬そうなパンが並べられている。 「あんたが食べるものよ。まさか、貴族と同じ食卓に座れると思ってたの?」 ルイズが呆れたように言う。 それに対してホワイトスネイクはさらに呆れたように、 「私ハ生物デハナイカラ、食事ナンテ取ラナインダガナ……」 こう言った。 「えっ……あんた、生き物じゃないの? っていうか、それってどういうこと?」 「コレハ私ノ推測ダガ、私ハマスターノ精神ニ『寄生』シ、ソコカラ常ニエネルギーヲモラッテイルノダ」 「き、寄生!? そ、それって、何か危なかったりしないの!?」 「ソウイウ心配ハ今ノトコロ見当タラナイカラ安心シテイイ。 アト…ソウダナ。 私ハ力の『イメージ』とか『ヴィジョン』ニスギナイカラ、腹ガ減ルコトモナイ。 ……ソウイエバコノ事ヲ伝エルノヲ忘レテイタ気ガスルガ、 マスターノ方モコンナ食事ヲ私ニトラセルツモリダッタノダカラ堪エテクレ」 淡々とルイズに説明するホワイトスネイク。 しかしルイズにとってはそれが分かったような分からないような説明であったことと、 「使い魔への教育」の名目で貧相な食事を取らせる目論見が見事に外れたこととで、 ルイズはぽかーんとしていた。 そのとき、そんなルイズをクスクス笑う周囲の生徒達の口から「ゼロ」という単語が出てきたのをホワイトスネイクは聞いた。 確か食堂に来る前に見た女……キュルケもルイズに向かって「ゼロ」とか言っていた。 一体どういう意味なのだろうか、と考えていたところで、 昨日、ルイズが魔法を使えないと推測したことを思い出した。 (魔法ガ使エナイ者ノ事ヲ『ゼロ』ト言ウノカ? ソレトモマスター個人ノ事ヲ指シテ『ゼロ』ト呼ブノカ…? イズレニシテモ、マスターヘノ侮辱デアルコトニ変ワリハナイダロウナ…) そんなことを考えながら、ホワイトスネイクは不機嫌そうに食事を取るルイズを見下ろしていた。 To Be Continued...
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味も見ておく使い魔-3 ルイズは顔のデッサンを狂わせた露伴を連れて大学の講義室のような部屋に向かった。 次の魔法の授業はそこで行われるのだ。 ルイズと露伴が中にはいって行くと、先に教室にいた生徒たちが一斉に振り向いた。 そして露伴の顔を見て唖然とする。 その中にブチャラティもいた。周りを女子が取り囲んでいる。キュルケもいた。 皆、目から『恋する乙女ビーム』をブチャラティに発射している。 (さすがブチャラティ!普通の平民にできないことを平然とやってのける!) (そこにシビれる!あこがれるゥ!) 「む、すまないがみんな。ルイズがきた。オレは彼女のところに行かなくちゃあならない」 「あ、あんたなに…」 ルイズの発言は別の男子生徒の絶叫で打ち切られた。 「たかが平民のくせして!僕のモンモランシーに手を出すな!」 「ギーシュ、おまえモンモランシーと付き合っていたのか?」 「君はケティと付き合ってたんじゃなかったのか?」 教室内が騒然となる。 「君に『決闘』を申し込む!場所はヴェストリの広場!時間はこの授業のあとだ!」 「別に私はあなたのものになった覚えはないわ」 「いいぞ!生意気な平民をブッチめてやれ!」 「ギーシュ!あなた大人気なくてよ?」 「僕の(脳内の)彼女をとられた恨みを晴らしてくれギーシュ!」 唖然としているルイズを除いて、教室内にいる人の行動は見事に3つに分かれていた。 女子生徒のほぼ全員はブチャラティを擁護する。 男子生徒のすべては半ベソをかきながらギーシュを煽り立てる。 そして約一名、スケッチしている。 この『サバイバー』が発動したような混乱は、教師のミセス・シュヴィールズが教室に入り、生徒全員の口に赤土の粘土が押し付けられるまで続いた。 「今は失われた系統である『虚無』をあわせて、全部で五つの系統があることは皆さんも知ってのとおりです…」 ミセス・シュヴィールズの講義が続く。ルイズの使い魔たちは近くの床に座って興味深そうに話を聞いている。 ルイズは、使い魔に椅子に座らせるつもりはなかったし、そもそも学生用の椅子では小さすぎて、この二人の体格では座れないのだ。 ルイズはブチャラティのことが気になって、講義が耳に入っていなかった。 (なによ、キュルケなんかといちゃついて!こいつ私の使い魔って自覚があるのかしら?) (それにメイジと決闘?平民が?怪我じゃすまないわ!) 「ねえ、ブチャラティ。あなた決闘を受けるつもり?」 自分の使い魔に小声で話しかける。 「そのつもりだが?受けなけれは収拾がつかないだろう」 「それよりもだ。君にひとつ質問がある。 メイジには得意な魔法を冠した二つ名をつけるそうじゃないか。 キュルケは火の『微熱』、シュヴィールズは土の『赤土』だそうだが、君の『ゼロ』というのはいったいなんだ? キュルケ達に聞いても笑ってごまかされてしまった。」 「なんだっていいでしょう!」 講義中に叫んだので、ルイズは先生に見咎められてしまった。 「ミス・ヴァリエール!」 「は、はい!」 「おしゃべりする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう」 「え?わたし?」 「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 「わかりました。やります」 「ルイズ。やめて」 ルイズは、蒼白な顔で懇願するキュルケを無視して立ち上がる。 そして緊張した顔で、つかつかと教室の前へ歩いていった。 「君、これは好意で言っておくが、命が惜しいなら何か物陰に隠れたほうがいいぞ」 ロハンが机の下に隠れながら話しかけてきた。 よく見ると、他の生徒も椅子や机の下に隠れている。 「どういうことだ?」 その瞬間、教壇からすさまじい爆風が破片とともに襲ってきた。 「おおおおお!」 「も、ものすごい破片飛沫の広がりとその爆発のスピード!」 「床に伏せるか!」 「それとも飛んでよけるか!」 「だめだ!どうしても広がり飛んでくる破片のどれかに当たってしまう!」 「これしかない!」 『スティッキィ・フィンガーズ!』 服についたほホコリを掃いながらブチャラティはつぶやいた。 「つまり、彼女は魔法成功率が『ゼロ』だから『ゼロのルイズ』と呼ばれているわけか…」 「悪いことを聞いてしまったな…」 岸辺露伴はこの惨状を冷静に観察していた。 ルイズの爆発の被害は、その規模と比べて小さなものにとどまった。 ブチャラティは無傷。 爆心地にいたルイズも、服はボロボロだがなぜか無傷。 ミセス・シュヴィールズは倒れているが、 ピクピクと痙攣しているから死んではいないだろう。 そのほかの被害は、教室が『靴のムカデ屋』が爆発したように滅茶苦茶になっているほかは、ガラガラ声の小太りなメイジが一名、脳を半分シェイクされた程度で済んだ。 先生が気絶しているので、授業は必然的にお開きとなっている。 ブチャラティと生徒達はぞろぞろと部屋の外に向かっている。 おそらく『決闘』を見物しに行くのだろう。 「ロハン、あなたはここをきれいにしておいて」 ルイズがあせったように話しかけてくる。事実あせっているようだ。 「ここの掃除は君自身がすべきじゃないのか?」 「それはそうだけど!私はブチャラティを止めてくる!このままじゃ彼殺されてしまうわ!」 そういい捨てて、もうすでに姿の見えないブチャラティを追いかけていった。 「僕も『決闘』を見たいんだがな…」 掃除をするか、無視して見物にいくか考えていると、誰かに右腕の袖をつかまれていた。 「ん?なんだ?」 振り返ると、青い髪の少女がいた。 「手伝う…」 「手伝ってくれるのはありがたいが、『決闘』は見なくていいのか?」 「『決闘』に興味はない」 「それよりもあなたはしばみ草を『イケる』といった」 「だから、仲間」 手を差し出してくる 「あ、ありがとう…」 そういいながら僕は彼女と固い握手を交わした。 To Be Continued... 戻る 味も見ておく使い魔-2に戻る